寒い日に考える1
今日も寒いですね。
家づくりに携わる身としては、こんな日にいろいろ考えることは、体感と連動するだけに大切なことだと思っています。<日数>冬に備えた家づくりというと、こんな日にも快適に暮らせることを目指したいものです。一方で、「こんな日はそれほど多くない。」という事実も覚えておく必要があります。一番厳しい寒さの記憶は残りやすいですが、例えば、それが何か月も続くわけではありません。
1月2月の寒さの厳しい中にあっても、「大寒波の数日」が何回か、というのが実際です。
寒い日はありますが、やはり愛知県は北国ではないのです。
<室内の平気温>冬の室内の平均気温は、日本の場合、南に行くほど低い傾向にあるという調査結果があります。
北国は、寒すぎて室内で寒さを我慢するという選択肢がないので、必ず一定以上の室温に部屋を暖めているのに対し、愛知県もそうですが、比較的温暖な地域では、寒さを我慢しながら暮らしている割合が高いのです。
<冬の温度差は夏の温度差以上>夏の熱中症の症状も体に負担がかかりますが、寒い部屋で我慢して暮らすというのも、相応に体に負担がかかります。
我慢は、美徳ではないと思います。
<省エネの問題>寒さをなぜ我慢するのか?
日本人のもったいないという気質が、その主因の一つであることは想像できます。
建物の断熱性能が低いと寒いような気がしますが、省エネの視点を無視すれば、相当に断熱性能の劣る建物でも、ふんだんに適材適所の暖房器具を配置し、寒くない環境を実現することは可能です。温度分布などの快適にかかわる部分も、暖房方式の組み合わせなどにより、いわば力ずくで快適さを得ることはできます。
<建物への負担>一方で、断熱性能の悪い建物での強力な暖房は、一般的に建物に負担をかけます。具体的には、建物の見えないところで大量の結露を起こしている可能性が高いのです。
昔の建物は、結露をしようが雨漏れがしようが比較的に水分に強い建築材料が使われていたのですが、戦後からの新建材を大量に使用する家づくりになってからは、結露が建物に与える悪影響は大きくなっています。
<暖房の能力>暖房の能力を考える場合、結局はお金です。(身も蓋もない。(^^;)
たくさんお金を出せば、大きな暖房能力が買えます。
ただ、最初にたくさん出すか、使う時にたくさん出すか、またはその両方か、ということは暖房の種類によって異なります。
例えば、同じくらいの熱量を供給するのに、エアコンは、石油ファンヒーターの5?10倍の価格です。一方、同じ熱量あたりのランニングコストは、概ね半分くらいです。(今どきのカタログモデル同士の比較。エアコンの方が熱量当たりのラニングコストは安い。)
床暖房を比較しても、温水だったり電気だったり、様々な方式によりイニシヤルで10倍、ランニングで5倍くらいの差はあります。
買うときは、安いほうが良いですし、買った後は、やっぱり高くても省エネなほうが良かったと思うわけです。(^^)
<建物にあった暖房>断熱性能や室内容積、天井高など、様々な要因により、同じ熱量を供給しても、暖かさの感じ方は異なります。
正解を求めるには、建物の断熱性能、建物に人のいる時間帯、中での過ごし方、暑さ寒さに対する感性、などを総合的に判断しないと...。ということになって、結構大変です。
薪ストーブなどのように、暖房という目的と、趣味やライフスタイルの構築を兼ねるものまであります。
せっかっく寒い日が続くので、しばらくシリーズで、暖房についての考察を書いていこうと思います。
断熱系のおさらいを。^^
冬が一番実感がわくので、冬のうちに住宅の断熱系のおさらいを。
高気密高断熱だとか、防湿層の確保だとか、いろいろな概念がありますが、プロでも混乱しがちな断熱系のお話しを、あっさりと説明したいと思います。
いまは、冬なので、夏の冷房は一旦無視します。(夏になったら夏の説明を…、するかもしれません。^^)
<基本は、3つの概念>
あたたまった建物(床や天井、家具など家の中にあるあらゆる物)が冷めないようにする→断熱
建物内の空気を計画的に循環させる→気密
内部結露による悪影響を防ぐ→防湿
暖房器具により放出された熱は、室内の空気と建物が吸収します。もし、断熱性能が悪く、気密性も悪ければ、その吸収した熱をドンドン屋外に逃がすことになります。
室温を高くしても、建物が冷たければ人は寒く感じますので、建物そのものが冷たくならないことはより重要です。
断熱性能に関しては、高いにこしたことはありません。
一方、気体である空気が蓄えられる熱量というのはそれほど多くありませんし、そもそも人が生活する限り換気は行いますので、空気を逃がさないようにする事はできません。
そのため、気密性能はそれほど重要ではないと考える方もたくさんいます。気密化に否定的な、アンチ高気密の意見をお持ちの方もいらっしゃいます。
それには、「気密=空気を閉じ込めておく」と思っている場合と、「ビニールによる防湿措置=気密である」と考えて拒否反応が生じる場合とが、主なケースだと思います。そこには少し誤解があります。
エアコンやファンヒーターなど温風を放出する暖房器具では、換気量を適切にコントロールできないと、温風が建物をあたためる前に屋外に逃げて行ってしまいます。そうならないように換気は計画的に行う必要があります。
ところが、意図した換気計画通り空気が循環するためには、建物に隙間があってはだめです。しっかり換気をするためには気密性能は高くなくてはならないのです。
気密性は、空気を閉じ込めるためではなく、空気を移動させるために必要なのです。
また、気密と防湿というのは全く別の物です。気密化された状態でも湿気というのは、しみこむように伝わって移動します。湿度の異なる空気を、流れを完全に止められるような材質で気密化した場合でも、湿気はしみこむように移動する事ができます。例えば、合板やプラスターボードのような物でも、しみこむように湿気は伝わるわけです。
そうして湿気がしみこんだ壁の内部が冷やされると、結露して悪さをしてしまうので、湿気がしみこまないようにビニールなどを貼って、防湿しましょう。というのが、防湿の考え方です。
逆に言えば、そもそも湿気を通さない材料を使っていたり、湿気がしみこんでも悪さを起こさなければ、ビニールを貼らなくても良いということになります。この場合、防湿措置は重要ではありませんし、ない方が良いケースも考えられます。この判断は、もっぱら断熱材の種類によって行われます。(実際には、下地や仕上げ材の材質特性も考慮する必要がありますが、ここでは割愛します。)
前者の代表的な断熱材は、ボード系の発泡断熱材で、内部に独立気泡をもつタイプなどです。後者の代表的な断熱材は、例えば羊毛断熱材など調湿性能を特徴とするような物になります。
防湿措置と気密を混同してしまうと、「調湿性能の高い材料を使用し、防湿しなくても良い(むしろ嫌)から、気密化は不要!」という考えになってしまうのです。
防湿性能は、結露を上手くコントロールする事の一つの手段にすぎないのですから不要なケースもたくさんありますが、換気をコントロールするために必要な気密性能は高い方がよいと言うことになります。
ビニールの防湿材に囲まれた空間は、なんとなく嫌だという気持は理解できます。
しかし、くらし方による室内の湿度の発生量が、開放式の燃焼暖房を使って大量の湿気を出したり、加湿器による加湿に積極的な場合など、大量の場合は、調湿効果のある断熱材を使っていても、合わせて防湿措置をとったほうが良い場合もあります。
くらし方にかかわらず、結露による悪さを、安価に抑制できるという意味で、防湿というのは効果的です。
躯体の省エネ対策には、本当にいろいろな方法があります。
しかし「熱を逃がさない」「換気をコントロールする」「結露が悪さをしないようにする」という3つの対策をかなえることを目的に、仕上げ材やコストとのバランスなどで決めていけば、間違った組み合わせにならずにすみます。
あれ?もっとあっさり書くつもりでしたが…。くどいかも。
長文乱文失礼しました。^^;
ユニットバス廻りの基礎の断熱
昔は、お風呂と室内の間に断熱を入れることはあっても、お風呂そのものは断熱的には外だったのに、今やユニットバス自体の断熱の他に壁天井にももちろん断熱材が入り、基礎まで(ユニットバスの部分は気密化するので)断熱材を敷き詰めるんだから。
当時の職人さんだったら、いったい何だこりゃ、って感じだろうな。
「常識は、時代とともに変わっていくのだ。」
ということで、次代の常識を少しずつ先取りしていきたいと、ユニットバスの下の断熱材を眺めながら考えたのでした。
外断熱(外張り断熱)の場合の遮熱材
遮熱材と断熱材が一体となったボード状の断熱材を、躯体の外側に張っていきます。
充填断熱の場合の遮熱材
遮熱効果のある透湿防水シートを利用しています。
スタイロフォームによる充填断熱
固形のボード状の断熱材であるスタイロフォームによる断熱例です。
スタイロフォームはとても変形しにくい強度を持っているので、柱間に充填断熱材として使うことにより、壁の剛性アップにも一役買っていると思われます。
断熱性能の良い家とは?(重要)
断熱性能の良い家とは、家の内外で熱の移動の少ない家をいいます。
決して、断熱性能が良い=「冬暖かく、夏涼しい家」のことではないことに注意してください。
家の中を少しのエネルギーで暖めたり、冷やしたりすることができる家のことです。
家を快適にするには、「冬暖かく、夏涼しい家」にしたいものです。
この方法には、様々なアプローチがあります。
冬の日差しを取り入れてぽかぽかしたり、夏に風通しを良くしたりすることもその一つです。
これらは、家の内外で熱の移動を少なくするという断熱性能の考えとは正反対のものです。
ただし、それぞれの考えかたは相反するものではなく、上手に組み合わせれば効果を高め合います。
弊社では、断熱性能にこだわって家づくりをしていますが、それは手段の一つであって、快適な暮らしを提供することが目的であることを常に忘れないように心がけています。
断熱と遮熱
一般に断熱と一口に言っていますが、熱を保ったり、遮ったりする考え方には、断熱と遮熱という2種類があります。
おおざっぱに説明すると、家の外と内の気温差を保つ能力が断熱で、太陽の熱(日光が運んでくる熱)や、室内で発生した熱源から目に見えない赤外線のような形で行き来する熱を遮るのが遮熱です。
ウレタンやポリスチレンボード、グラスウールやロックウール、ペアガラスなどは、断熱性能を上げるもので、断熱材や防水シートの表面が銀色に見えるものや、Lo-Eガラスなどは遮熱性能を上げるものです。
省エネ対策は、それぞれを組み合わせて行うことになります。